Vol.498 上司運を"運"にしない

新卒採用で「幹部候補枠」を設ける企業がちらほら出てきています。通常の採用とは
異なる選考基準・プロセスで若干名を採用する、というものです。その背景には
「40代でグローバルにビジネスを牽引できるリーダーを育成したい」というねらいが
あります。新たな「キャリア採用」です。

この選考プロセスにIndigo Blueの体験型ケーススタディ:OTの手法を活用いただいて
います。2時間半程度の疑似的に設定したプチ修羅場(OTなので)の体験なのですが、
面談や普通のグループワークではわかりにくい、個々の特性が見えてきます。

先日も某企業で9名の学生たちが果敢に取り組んでくれました。ここに出てくるだけ
あって、さすがにそれなりに優秀。しかし、そこにプラスαの要素や伸びしろを
感じさせるかどうか。ここを診ます。

今回も非常にポテンシャルを感じさせる学生がいました。プレッシャーをかけると
それに応えてきました。押せば押すほど、内なる”熱”が出てくる。わずか2時間半
でしたが、その中でもその彼は”成長”を感じさせてくれました。この学生は◎です。
(但し、第一印象が暗く、受け答えもとっつきにくいので、通常の面談だと一次で
落とされるタイプですが。)

他の企業さん向けに開催した会でも今後が楽しみな学生に会うことができました。
頼もしい限りです。

今後の彼らのことを思うに気になることがあります。それは彼らの「上司運」です。
(新人が社会に出て最初の1~2年で出会う上司が良いか悪いか、それを「上司運」と
私は称しています。)「上司運」の良し悪しがその新人の社会人人生をある程度決める
と言っても過言ではないと思っています。それほどに新人にとって、最初に出会う
直属上司の影響は大きいものです。

困るのは「放任」です。新人は仕事の基本を身に着けるのが最初にやるべき”仕事”です。
それこそ、挨拶の仕方、礼儀、身だしなみ、ルールの守り方、メールの出し方、情報の
整理の仕方、時間の使い方・・・、こうした基本中の基本を仕事を通じてしっかり
身に着けてもらわないといけません。基本ができていないと後々伸びません。

幹部候補者として配属した先の上司が変に慮って「自己を尊重するという名の”放任”」
したりするとその人間のためになりません。ここは厳しく基本を叩きこむ必要があります。

「放任」しているつもりはないが、現実的には自分の仕事で手一杯でとても指導など
できないことから「結果として放任」になることもありますが、これもマズイ。

幹部候補者であれば短期間に複数の部署を経験させることになると思います。
「放任」されたとしても、それなりに成果を出していくでしょうが、基本がないと
どの仕事も上っ面しかわからず自分の「軸」がない人間になってしまいます。その社員が
30歳になった頃には自分の”本籍”となる仕事群(ジョブファミリー)を自覚している
ようにしたいものです。

そうは言っても忙しいので・・・と現場が言い訳しないために、幹部候補者を
配置する先の職場は「自然体+1」のヘッドカウントにしましょう。
人一人きちんと指導するとなると、その組織にある程度の人的余裕がないと難しいです。
これは育成のための投資です。

その上で「上司力」が強そうな人につける。誰でもできるというわけではありません。
仕事をしていく上での「マインドセット」と「スキルセット」の両方の基本を叩きこんで
くれる人でないといけません。そういう「上司力」を育成するための「オリエンテーション/
トレーニング」を受講してもらいましょう。

世の中に「上司力」強化トレーニングとありますが、その多くが普通のリーダーシップ研修です。
ここで重要なのは新人と正面から対峙し、影響を与え導くメンター力です。理論ではなく
実践型でないと使えません。コンサル中の某企業で必要なので世の中の実例を調べたのがですが、
これ!というものがないですねー。(しょうがないのでIndigo Blueでまた、創るか、と。)

更に「無気力上司」も困ります。決まったこと以外へのチャレンジを回避するタイプ。
このタイプの下につけますと、優秀な新人たちは”明日のわが身”を憂いて2年くらいで辞めるか、
その「無気力上司」が人間味あふれていたりすると「そういう生き方もあるな。」と変に
影響を受けてしまいます。

これだと、会社として将来ための投資として特別採用した意図が丸つぶれです。そういう
上司に当てていないかどうか、要チェックです。いずれにしても「上司力」を意識した
配置とそのための研修、このサブシステムを動かすことが「新たなキャリア採用」の成功の鍵です。

おまけ-1:私の「上司運」は〇だったと思います。ホテルで宴会場のウエイターの仕事を
しているとほぼ毎日異なるキャプテンの下で働きます。いろいろな人のいろいろなやり方を
短期間で体験できたことは実にラッキーでした。

おまけ-2:定時前に出社して、その日のイベント運営に必要な資料をコピーし、調理場や
関係各所に挨拶を終え、お茶をいれてキャプテンたちの出社を待つ。この基本姿勢は今に
役だっています。

お知らせ:「空気を読むを科学する」セミナー、いよいよ今週金曜日です。相手の表情に
隠されたホンネを読み解くためのノウハウを実践的にご紹介します。
(ほぼ満席ですが、あと数名程度は大丈夫ではないかと)

http://micro-expressions.indigoblue-service.com/ 

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