Vol.531 ピーターの法則に陥らない

さて、「ピーターの法則」をご存知ですか?

 

ピーターの法則」は1969年に南カリフォルニア大学教授の教育学者ローレンス・J・

ピーター(Laurence J. Peter)により、レイモンド・ハル(Raymond Hull)との

共著 THE PETER PRINCIPLEの中で提唱されました。

 

Wikipediaにわかりやすいまとめがあります。

 

能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。すると有能な平(ひら)

構成員も無能な中間管理職になる。

 

・時が経つにつれて人間はみな出世していく。無能な平構成員はそのまま平構成員の

地位に落ち着き、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、

各階層は無能な人間で埋め尽くされる。

 

・その組織の仕事は、まだ出世の余地のある、無能レベルに達していない

人間によって遂行される。

 

シニカルです。無能になるために出世する、とも読めます。私も若い頃にこの法則を

知り、当時の管理職たちを見てなるほどーと変に納得したことを覚えています。

 

それから20年。経営者の立場で組織を見るようになって少々違う見方をするように

なりました。

 

「無能」とは“期待する仕事ができない”ということでしょうが、そもそもそういう

人事をすること自体がいけないのです。デキない人を出世させてはいけないのです。

ピーターの法則が起きないようにしないといけないのだ、と。

 

ここで言う「デキる」「デキない」を判断するのは結果ではありません。進め方、

関係者の巻き込み方、不測事態への対応など、そのプロセスの細部に本質があります。

誰がやってもうまくいかない事、うまくいかない時はあります。しかし、そこから

学んでいれば良し。“失敗しない”ではありません。

 

デキるための要件を知り、その気になる。これで、たいていのことはデキます。

但し、そのデキるための要件が自分に向いていない(要件を満たせない)ことはあります。

 

“デキるための要件”は次の3つの要素から成ります。

 

「心の持ちよう」

「ポータブルスキル」

「特定スキル」

 

ちなみに「ポータブルスキル」とは、業種・職種の垣根を越えて、どんな仕事や職場でも

活用できる汎用性の高いスキルのことです。「特定スキル」とはその会社のその仕事を

するために必要なスキルや経験のことです。

 

このうち、「特定スキル」が特に効くのは個人として貢献する場合です。ですから若いうち、

役職に就く前にはこの発揮度合いが問われます。

 

「特定スキル」を劇的に伸ばす「心のもちよう」があります。

それは「飢餓感」と「屈辱感」です。

 

仕事ができるようになりたいと強く願う・・・。しかし、どうしたらよいかわからない。

誰かが手取り足取り教えてくれるわけではない。自ら試行錯誤を繰り返さざるを得ない。

これが「飢餓感」です。

 

加えて「屈辱感」。自分はこんなにできないわけがない・・・

ところが「できない現実」に直面。おまけにそれを叱責されてしまう。この「屈辱感」です。

 

さらに「ポータブルスキル」がそれなりのレベルにあると、特定スキル」の習得習熟が

早くなります。かようにこの3つは相互に影響を与えています。

 

マネジメント職になると効いてくるのが「心の持ちよう」と「ポータブルスキル」です。

ここを鍛えずして出世するから「ピーターの法則」通りになってしまうのです。

この2つが鍛えられていると、何がきても自分の型にはめて対応できます。

 

マネジメント職は個人プレイヤーではありません。多くの人たちを巻き込みながら

物事を進めて成果を出すことが仕事です。そのためには「何を言っても大丈夫だと

思わせる安心感・安定感」「感情をコントロールできるしなやかさ」「人間的な魅力」が

必要です。これらを司るのは全て「心のもちよう」です。

 

「心のもちよう」を鍛えるのには時間と経験を要します。上位職にするとしたら、

実際のポジションに就ける前にやっておかねばなりません。これは仕事を通じた経験と

“その気になるための”本人の気づきが必要です。それを仕込むこと。これらを考える

ことこそ、管理職育成のための研修の設計です。管理職に登用した後に一回こっきりの

管理職研修をしたとしても、それは(意図せず)教育担当の「アリバイ」づくりだと

言われても致し方ありません。

 

 

おまけー1:学校教育、多くの企業で若い世代の育成プランが「飢餓感」「屈辱感」と

正反対の状況にあるのが心配。

 

おまけー2:最終的には「心のもちよう」。

これがポテンシャルがどれだけ現実化するかを決めますね。

 

おまけー3:行きたいところはたくさんあるものの、行く時間がないのが残念。

 

例えば、「紙の月(観たい)」「ティムバートンの世界(行きたい)」

「”Dominique Eddy Dubin”展@THE BASEMENT(観に行きたい)」

那須二期倶楽部(行きたい!)」 ・・・こりゃ、10や20はありますね。 

みなさん、代わりにどうぞ。(ToT) 

 

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