836号「取締役会の実効性強化」(メールマガジン「人事の目」より)

コーポレートガバナンス・コード(CG)の見直しが進んでいます。この3月31日にも金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第26回)が開催されています。上場企業の方、および上場を考えている企業の方は金融庁のサイトにある「コーポレートガバナンス・コード ~ 会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために(改訂案)」を一読しておいた方が良いと思います。

CG見直しの柱の一つが「取締役会の実効性強化」です。これについての私見を述べます。

CGの改訂案に「取締役会は、その役割、責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。」とあります。

これは素晴らしい書きぶりです。特に職歴、年齢という表現が加えられたのがいいですね。多くの上場企業では取締役の年齢の幅が狭いです。未来に対する責任を持つためにも若い世代の参画が必要です。ユーグレナが採用している18歳以下限定のChief future officerみたいな動きがもっと展開するとよいのになあ、と思っていました。今回のCGが確定すれば、仕組みとして世代の多様化を意識することになります。ここはとても良いと思います。

私自身も経験がありますが、社外取締役はどうしても「点と正論」の発言になりがちです。日々動いている現場にいるわけではないので、取締役会の議論からの「点の話」になりがちです。また、立場上、“しがらみ”に囚われずに正論を言うべしという意識が働きます。しかし、点の情報に基づき正論を主張し過ぎると、業務執行側からすると、“実態をわかってない”発言になってしまいます。

CG上、社外取締役の意見を無視することはできません。やむを得ず、実質的には意味がない(少々言い過ぎですが)正論に時間と労力を割くことになります。場合によっては決議のタイミングが1か月遅れたりします。これでは取締役会の実効性強化どころか、マイナスです。

取締役会は企業によって「業務執行の意思決定」と「業務執行者の監督機関」のバランスが異なります。かつては100%「意思決定」でしたが、90年代より徐々に「監督」の要素が入ってきたというのが歴史的な経緯です。この「監督」を適切に行うためのガイドがCGなのだと思います。

会社には様々な利害関係者が存在します。これは上場していなくてもそうです。松下幸之助さんのお言葉を借りると「企業は社会の公器」です。利害関係者それぞれの利害をいかに意識するか、必要に応じて建設的な対話をするか、これが業務執行者たちに問われています。

利害関係者の関心事は具体的には様々です。ただ、根本は変わりません。「持続的成長」です。特にコロナ禍の影響もあり、これからは先行きが不透明です。自社をいかに適応進化させ、持続的成長を実現するか、このための適切な「問い」を経営陣に投げかけること、それが「監督」であり、そのための機能と実力を備えることが、取締役会の実効性を高めることだと私は解釈しています。

CGでは「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」が求められています。つまり、コーポレートガバナンス・コードを遵守するか、遵守しないのであれば、その理由を説明することを求められています。
みなさんの会社でも取締役会の実効性強化の本質を理解し、自社としての方針を決めるための議論が必要ですね。

その一助となるべく、Indigo Blueで取締役会メンバー全員参加のオンラインプログラムを用意します。(7月ころからリリースします。)


おまけ:こちらをご覧ください。(金融庁のホームページから)
https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20210331.html


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