Vol.710「階層を減らしましょう」(メールマガジン「人事の目」より) 

「階層」を減らしましょう。トップから末端まで3階層に。これが目指す姿だと思います。

「階層」にはいいことがありません。まず「熱」が伝わりにくくなります。組織を動かす
ものは指示命令ではありません。やろう!という「熱」です。トップの熱、中間管理職の
熱、現場の熱。これがすべての原動力になります。間に人が入るとこの「熱」が薄れ
がちです。人を介すると「熱」は「ロジック」に変貌していきます。「ロジック」を
理解しても、それだけだと人は“よしやろう!”とはなりません。

熱だけではありません。情報量も減っていきます。間に一人人が入ると20%程度の
情報量が失われるのが常です。階層が5つあったりしますと、起点者の源情報は
影も形もなくなります。

階層が多いと階層ごとに独自の解釈や編集が行われます。人は情報を伝達するときには
自分の印象を付帯して伝えるものです。自分が良いと思っていることは前向きに、
そうでないことについては否定的に話します。これは感情を有する人間の間のこと
なので避けられません。

時間がかかるのも困りものです。一斉に伝えたいのに、途中で止める人が出たりします。
止めるつもりはなくとも間の人のアクションが遅いと結果として止めているのと
同じことになります。“今は言うタイミングではない”という勝手な解釈や忖度で
意図的に止める人もいます。

階層が多いと、よく知らない人どうしで仕事をすることになります。トップは
現場の人ことを知りません。現場もトップの熱に直接触れる機会がありません。
お互いによく知らない人たちで仕事をするとミス・コミュニケーションによる
問題が勃発しがちです。組織内の問題の大半がこれです。

お互いによく知らないと信頼関係どころではありません。表面的な関わりに
留まりがちです。相互支援、指導も遠慮がちになります。知識や経験の共有も行われ
にくくなります。そうなると組織自体が成長しません。

いいことがありません。階層を減らしましょう。冒頭に3つくらいと書きました。
責任者、中間管理職、一般の3つのイメージです。スパン・オブ・コントロールの
観点からすると(業態にもよりますが)一人の管理職がマネジメントする人数は
8名から12名程度がよいでしょう。そうすると単純計算で一組織65名から145名まで。
大企業にしてみると階層3つは現実的ではない感じがしますが、そうでもありません。
解決する方法があります。

責任者の権限を大きくすればいいのです。事業遂行上の90%程度のことを、
この責任者が決めることができるようすれば、この責任者の上にさらに階層
があったとしても実質的なオペレーションは3階層でやっていることと同じことになります。

権限を下ろせない理由として、よく耳にするのが“下が育っていない”です。
と大きな権限と責任を感じながら仕事をする経験をさせなければ、いつまで経っても
できるようにはなりません。このほかにも“ガバナンス上問題が生じる可能性がある
からできない”という声も聴きます。しかし、そもそも信頼できない人間を要職に
つけていること自体が問題ではないでしょうか。

階層は人の成長にも影響を与えます。新卒で大企業に入社した人とベンチャー、
中小に入社した人を見るとよくわかります。新卒時の総合力は大企業に入った人の方が
上だったはずなのですが、10年も経つと逆転します。ベンチャー、中小企業に勤める
人の方が“度胸”、“スピード感”、“仕事の幅”で明らかに上になっていることに
しばしば驚かされます。大組織の中にいると、課題に即応する筋肉が衰えるのかも
しれません。またデキる若者ほど使い勝手のいいスタッフとして使い倒され、
指示待ちの癖がついてしまうのかもしれません。

ね、いいことがありません。階層を減らしましょう。

おまけ―1:“柴田さん、うちの店、食べ放題です” “え、ブッフェだっけ?”
 “いえ、お支払いいただける限りすべてのメニューが食べ放題です(ニヤリ)” 
(物は言いよう)

おまけー2:平成の若者はラジオ体操を知らない疑惑あり。
現在の30代も学校の体育の授業でラジオ体操をやっていなかったらしい。結構衝撃。

来週は夏休みのためメルマガお休みです。

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