「演ずる」。優れた人たちがやっていることです。
演ずるというと、なんだか“作り事”のような印象がありますが、違います。
本気で演ずれば、それが真実になります。本気で演じていれば、そのうち“演技”が
本物になります。
リーダーになり立ての人は、自分が考える理想的な姿を本気で演じてみてください。
最初のうちは気疲れします。しかし、そこで頑張って演じ続けてみてください。
慣れてきます。そうなると、それは“演技”ではなく、自分の一部になります。
私はこれを「なりきり力」と呼んでいます。
自分の「素」だけでやれることには限界があります。自分の「素」のキャパシティを
超えることをやらなければならないときには、この「なりきり力」を使うのです。
逆に言うと、「なりきり力」を意識することで自分のキャパシティをどんどん拡大・
拡張させることができます。
まずは、なりきる「役」をよく理解します。それは、どのような環境下で、
どのような立ち振る舞いをすることが求められているのか。ここをよく理解します。
次にその姿をイメージします。できるだけ具体的なシーンをイメージします。
ここまでできましたら、後はそのイメージの「なりきり」を始めます。
ここでポイントとなるのは、最初にイメージできるだけの情報を得ておくということです。
全て想像力でやるということではありません。リアルな情報が必要です。
例えば重要なプレゼンテーションの場合、まずはプレゼンをしている自分を
イメージします。このためには、プレゼンする場所がどこなのか、そこが会議室なのか、
応接なのか、立って話せるのか、座ってか、パワーポイントを使えるのか、
配布資料でやるのか、誰が聞き手なのか、何名か・・・、これらのことをイメージ
できるだけの情報がないと始まりません。
必要な情報収集。これが「なりきる」ためのSTEP-1です。
実は多くの人がこのSTEP-1を軽んじています。頭の回転が速かったり、器用である人に
その傾向があります。“その場対応”でなんとかなってきているからです。しかし、
重要な役目になればなるほど、STEP-1をおろそかにしていると、“その場対応”
ではうまくいかなくなります。これに気づかず“若いときは優秀だった”人に
よくお目にかかります。STEP-1を癖づけするところからやり直しです。
次に「なりきっているつもり」と「なりきっている」は違います。「つもり」は
「つもり」だとばれます。周囲が「ああ、無理してるな」と思ったら負けです。
そうならないためには、「なりきる」ために必要なスキルを高めないといけません。
プレゼンであれば、「話し方」「構成力」「スライドのデザイン」「質疑応答の
ハンドリング力」を高めておきませんとすぐに化けの皮がはがれます。「なりきる」
ために人知れず特訓する。これがSTEP-2です。
特訓をしなくても「なりきれる」状態になる。ここが「なりきり」のゴールです。
STEP-2の間はある意味で冷や冷やです。しかし、“ゴマカシ”はダメ。見る人が
見たらわかります。フィードバックを真摯に受け止めて、改善する。
この繰り返しを怠ってはいけません。
STEP-2からゴールまでの道のりは近そうで遠いです。ゴールに到達したと思っても
そうでないことが多い。周囲からのフィードバックを受け続けること。
これが「なりきり」のクオリティを高めます。
職場で「なりきり力」を発揮し、家庭でも「なりきり力」を発揮する。
どこでリラックスするんだ?と思うかもしれません。私もそうでした。
しかし、賢人から“そう思うこと自体まだまだだ”と諭されました。
そうなのです。「なりきり」が自分の一部になっていないから疲れるのです。
複数の姿に「なりきり」、かつ自然体。これが究極のゴールだと思います。
おまけー1:田坂広志さんが書かれた『人は、誰もが「多重人格」 - 誰も語らなかった
「才能開花の技法」』は大変興味深い内容です。なりきり力にもOT(体験型ケーススタディ)
にもつながります。
おまけー2:申し込んだ覚えのないクレジットカードが届きました。
担当デスクに電話したところ、血圧が100くらい上がりました。 (-_-;)
「申し込んでいないカードが届くのは問題ですよね?」
「でも、お受け取りになったんですよね。」
「申し込みに使われたメールアドレスは私のではありません」
「では、警察にご連絡ください」
こういうデスクの責任者には一日も早くAIに代わってもらいたい。
おまけー3:ちなみに、私になりすましてカードを申し込んだ“犯人”は判明。
解決です。 (^_-)