この時期、社長交代のニュースが新聞を賑わせています。4月下旬から5月上旬に次いで
多いですね。私が存じ上げている方が社長に昇任するケース、退任されるケースが数件
ありました。おめでとうございます。そして退任される方へ。お疲れ様でした。
次の社長をどのように決めるか。古くて新しい課題です。私自身、社長になる、社長を
降りるという経験を過去に何度かしていますので、当事者の複雑な心情はよくわかります。
ガバナンスの問題と絡めて、社外取締役が社長を決めるのが良いという意見がありますが、
私はこれには反対です。社外役員がすべきは「社長の選定を現職社長のブラックボックスに
しないこと」。ここまでだと思います。(会社ぐるみの不祥事や破綻からの再建等、
有事においてはこの限りではありませんが。)
次期社長を決めるときに考慮すべきは、自社が置かれている経営環境、戦略実行に必要な
コンピタンス(要件)、組織の状態、トップマネジメントチームを構成するメンバーの
キャラクター(強み・弱み)です。言う間でもなく、最も情報を持っているのは現職社長です。
ですから現職社長が自ら後任を選ぶというのが最も自然だと思います。
社外役員が知りうる情報には限りがあります。特に組織の状態や戦略実行のための
コンピタンスについては、実務に精通していない以上、具体的に把握するのは無理です。
但し、現職の社長が独断で決めるのは最も良くありません。なぜこの人が?という想いが
生まれてしまうと組織が混乱します。憶測が憶測を呼び、社内政治がはびこることになります。
当然ながら業績は悪化します。
現職の社長は、“何故この人を次期社長として推すのか”、これを関係当事者にわかって
もらう必要があります。この努力を怠ってはいけません。その関係当事者の代表になるのが
社外役員であり、社内の人事担当役員なのです。
このプロセスがないと、“決めてやった”、“あの人に決めてもらった”という感情が
前社長、新社長の間に残ります。これがよくありません。社長経験者たちが「顧問」などの
名目で君臨し続け、社内の統制がおかしなことになります。
私は一人の人間が長く社長を務めることについては好ましくないと思っています。
長くやればやるほど、その会社の中で社長が神格化され、多くの人が上を見て仕事をするように
なるからです。経営会議で議論がなされない、決めたことが実行に移されるのが遅い、
抜本的な改革が進みにくい、仕事がうまくいかない理由に社長の存在をあげる風潮・・・。
これらはトップの神格化に伴う悪影響事例の典型です。
私はここ10年ずっと「社長は6年まで」と主張しています。最初の2年で前任者の良い影響を
更に伸ばし、悪い影響を消し、3年目・4年目は自分の型で存分に経営し、5年目・6年目は
自分が退いた後にその企業が更に成長するための施策を推進する。これが持論です。
当事者たる社長もタイミングを逸すると、その会社で「社長であること」が自分や自分の
家族の人生の一部になってくるので辞められなくなります。そうなると無意識のうちに守りに
入ります。優秀な人材を見つけると、近くにおき“使い倒す”か、政治的に“潰す”動きを
とりがちです。自分が知らない領域での意思決定を避けます。会社の進化が終わります。
ちなみに、オーナー企業の社長はそもそも「社長であること」が人生の一部なので「6年退任説」
は当てはまりません。オーナー社長が辞めるときは自分の家族に承継させるか、株式の
売却を伴います。だからこそ、オーナ―社長は自分の進退を相談できる相手を見つけましょう。
老害を指摘される前に。
おまけー1:博多の通販事業の20代の若手勉強会で講演しました。講演後の懇親会で
ほぼ全ての参加者と名刺交換し、一言二言、言葉を交わしました。ここには成長したい!という
「飢餓感」がありました。こういう若者がいる地域・会社は伸びます。博多に注目です。
おまけー2: ソフトクリームを持っている人に「あ、くつひもが」。「ん?」
(ソフトクリームがぽとり)
古典的な展開ですが、平成28年の恵比寿で目撃。
おまけー3:テリー伊藤さんの自叙伝「俺とテレビと片腕少女」。知人から紹介されて一気読み。
「三丁目の夕日」世代にはグッとくる内容です。