Vol.636 働き方改革は”上司”次第

「人事の目」を始めて14年目に入りました。今回が636号。1,000号、登録者2万人を

目指して頑張ってみます。

 

年末の週刊ダイヤモンドの「2017総予想」の中に「働き方改革は有名無実化 功名を争う

政治家・官僚たち」という記事がありました。これが事実だとしたら本当に残念です。

 

「働き方改革」という取り組みを始めたことについて、私は素晴らしい事だと思っています。

 

これまでの時の政権は、働くことに関して根本的な見直しを避けてきたように思います。

このため至るところに「不条理な現実」があります。これらが改善されませんと、人口減

対策ができないどころか、優秀な若者や経済的に恵まれている人ほど海外に活路を見出す

ことになります。そうなると、日本は質量ともに人材過疎に陥ります。「働き方改革」は

次世代のためにも重要な改革なのです。

 

それにしても、この改革のカバー領域は広いです。私の見立てでは「正規・非正規の

格差問題(を通じた貧困問題対策)」、「長時間労働の是正(を通じた過労死問題対策)」、

「女性の社会進出の支援(を通じた少子化問題対策)」、「高齢者の就労促進(を通じた

年金問題対策)」等。さまざまな問題・課題が絡み合っています。当然ながら税制・

社会保険の問題も絡んできます。

 

まさにパンドラの箱を開けるような検討作業だと思います。しかしながら、これらの問題の

本質を深堀りして、聖域なく改革を進めていただきたいものです。

 

正規・非正規の問題は「金銭による解雇」の法制化とセットでないと実現しません。

会社の業況に応じて販管費の見直しをするのは経営者としては当たり前です。最大の販管費

人件費なのですが、日本では正規社員の解雇は難しいので、ヘッドカウント(人員数)を

調整する「弁」として非正規社員を使わざるを得ないという現実があります。

日本の人材派遣会社の数が世界で一番多いのはそのためです。

 

改正労働契約法の「2018年問題:2013年4月1日以降、契約期間が5年を超える派遣社員

非正規社員の無期雇用化」もバランスを欠いています。「解雇法」の整備がない中で

運用されているので、今年以降、雇止めされる非正規社員が増えるのではないかと

心配しています。これだと、結果として改悪になってしまいます。

 

正規・非正規問題を「同一労働同一賃金」という耳障りのいい議論に終始させてはいけません。

       

長時間労働について。電通の過労死が社会問題化したことで厳格な規制が導入されるのでは

ないかと言われていますが、こちらも本質を見失った議論をしてはいけないと思っています。

 

長時間労働問題の本質は「自ら望んでいない長時間労働を強いられること」、または

「経済的な理由により、そうせざるを得ない状況になってしまうこと」です。いずれも

当事者にとっては「嫌であり、何かを犠牲にしたり、我慢をしている」わけです。

これが当事者の心を疲弊させ、不幸な展開につながっているのです。

 

「経済的な理由による長時間労働」は社会保障面から検討した方がいいと思います。

ここでは詳述しません。前者の「自ら望んでいない長時間労働」については、その状態を

生んでいる原因を潰さないと解決しません。例えば、これまで100時間残業を強いていた

ところに、30時間という規制をかけたとしても、本当の意味での「働き方」が変わって

いないと意味がありません。どこかに歪みが出ます。

 

長時間労働が生まれるのは「やるべき仕事量に対して人員数が足りない」場合か、

「対応力・仕事の進め方に問題がある」場合のいずれかです。前者は経営課題として

対処すべきです。多くの長時間労働は後者によるものだと思います。

 

これを生んでいるのは「上司」です。例えば、

 

‐仕事の依頼が遅い(夕方に“明日の10時まで”という依頼をしたりする)

‐金曜日に“週明けまでに”という依頼をする

‐何をしてほしいのかはっきりしない指示をする

‐会議で聞かれたら出すための資料づくりを要請する

‐会議で何が決まって、何が決まっていないのかはっきりさせない

‐メールの返信が遅く、部下としてはGOなのかNo-GOなのかわからないまま放置される

‐組織内の感情的な揉め事を見て見ぬふりをする

モラハラ的な指導をする

‐ろくに教えもせずに仕事をさせる  ・・・など等

 

「上司」としてのスキルの向上なくして問題の解決には至りません。しかし、これらの点を

改善するためのトレーニングプログラムや教則本がまとまっていないと思うので、

書いてみようかなと思う2017年の幕開けです。本年もよろしくお願いします。

 

 

 

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一定期間徹底的に鍛える場です。詳しくは次号で書きますが、まずはお知らせまで。

 

 

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