817号「人を見る目がある。過信では?」(メールマガジン「人事の目」より)

自転車で激しく転びました。身体のあちこちに打撲と擦り傷。自転車のかごは曲がり、サドルが傷つき修理が必要です。(買い替えになるかも)着ていた上着とズボンも一部裂けました。雨の中、坂道を下っていたときにマンホールの上で滑ったようです。身体も痛いですが、心も痛い。原因は自分の過信です。雨が多少降っていようが、坂道だろうが大丈夫だろうという過信。自分のせいです。

過信と言えばこれ。

多くのリーダーたちは“自分は人を見る目がある”と思っています。要注意です。

こんなことはありませんか。

とても優秀な部下がいます。自分の期待に120%応えてくれます。その部下と話していると議論が弾み、気持ちもいい。つい、いろいろな仕事にアサインします。ところが周囲はその人について総スカン。(なんであの人ばかり重用されるのか・・・)陰口が横行します。さすがにあなたもその陰口に気づきます。

(あれだけやってくれているのに、なんでそんなにネガティブ評価なんだ?)と思い、その人の評価を修正しようとするのですが、うまくいきません。むしろ、なぜ、その人をそこまで守るのか?と周囲の感情を逆なでする結果となってしまいます。

その後も、その人を要所要所で登用するにつれ、周囲の気持ちはリーダーから離れ、リーダーとその部下は孤立することになります。一方で、その人の行動についての意見(クレーム)も耳に入るようになり、その意見を当人に伝えてなんとか周囲との関係性を改善してもらおうとします。ところが、本人からこう説明されます。

“実はこういうことがあって、その行動になった。自分が動かなかったら事態は悪化しただろう。”

これに(なるほど、周囲がわかっていない。)と思います。この部下は自分と同じ目線でよくわかっていると思い、誰がどんなことを言っているのかを伝えてしまいます。時にはメールを転送してしまったりします。これが事態をさらに悪化させます。その部下と注進してくれた部下との関係性は最悪になります。

過信です。自分の評価は極上。ただ周囲の評価は真逆。こんなときは自分の目が曇っているのではないかと疑いましょう。

これまで私は多くの人のアセスメントに関わってきました。5,000人は優に超えているでしょう。この点からすると「人を見る目」についてはプロとしてそれなりの実績があると言えると思います。しかしながら、こと自分が絡むことになると一気に目が曇ります。そういうものです。私情は判断を誤らせます。

過去に数回、ここで書いたような失敗をしたので、自分の評価と周囲の評価にギャップがある場合にはこう捉えています。

・その部下が自分にとって優秀なことは事実(ただし、それは自分に対してのみ)
・その部下が周囲とうまくやれていない(良くない影響をもたらしている)ことも事実

このため、こう心がけています。

・その部下の周囲への影響を最小にするアサインとすべし
・それができない場合にはその部下を自分から離すべし

・周囲のレベルとその部下のレベルに差があり、その部下の言っていること、やっていることの方が自分の期待に応えているという場合であっても、その組織にそのレベルで動くレディネス(準備)がない場合に無理にその部下に合わせようとすると、組織が機能不全になる(時間が必要)

これが過去の過信による失敗からの学びです。

何にせよ、過信はいけません。


おまけー1:過信からくる行動が「不遜」。かつての自分もそうでしたが、若くして成功すると無意識のうちにそうなってしまうもの。先日もそういう方にお会いしました。ここは経験豊富な先人が助言してあげるべきことです。


おまけー2:回り寿司は性善説をベースにした仕組みですね。皿をとらずにネタだけとる強者あり。

おまけー3:企業研究会の機関誌「Best regards」でインディゴブルーの人事手帖」なる、次世代経営者育成をテーマにした小説の連載を始めました。ぜひ、ご覧ください。

https://www.bri.or.jp/activity/news/136929



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