今日のテーマはファシリテーションです。
Wikipediaではこう解説しています。
「ファシリテーション(英: Facilitation)は、会議、ミーティング等の場で、
発言や参加を促したり、話の流れを整理したり、参加者の認識の一致を確認したり
する行為で介入し、合意形成や相互理解をサポートすることにより、組織や参加者
の活性化、協働を促進させる手法・技術・行為の総称。」
みなさんの会社では、このファシリテーションスキルを高めるためのトレーニングを
していますか?会議の質を担保するために必須のスキルトレーニングです。
そもそも日本企業ではみなが同じ言葉(日本語)をネイティブとして話すので、
言葉の定義のぶれや誤解が生まれにくく、ファシリテイターがいなくても困りません
でした。欧米系の企業ではそうはいきません。異なる言葉をネイティブとする人達で
重要な意思決定を行うので、ファシリテイター的な役割を担う人がいないと危険です。
このため、ファシリテイターなる役割が自然発生しました。
日本でファシリテイターなる言葉が一般化したのは90年代後半です。外資系企業に
よる日本企業の買収がその原動力です。私が”プロ”のファシリテイターとして
経営会議や幹部会に招聘され、ファシリテーションを行い始めたのもこの頃からです。
思い起こすと、米系自動車販売、米系保険会社、英系保険会社、米系通信会社、
独系アパレル・・・等、ずいぶんたくさんの企業に出向いてきました。
英語の問題もありましたが、むしろビジネス上の行動様式や意思決定の進め方の
ギャップを埋める役割を期待されていたように思います。私に仕事を依頼するのは
外資系幹部(非日本人)。但し、ファシリテーションの対象者はほぼ全員日本人
でしたので。
議論をする際に言葉の定義やイメージするもの(内包)が異なると議論が
かみ合いません。メンバーの一部が第二言語で議論しているときなど要注意です。
米語と英語も違うところがあるので安心できません。かつて、多国籍なメンバーで
「人事制度」について議論していたときに、Compensationという言葉を「給与」
として議論していた米国人と「補償」として議論していたアイルランド人がいて
混乱しました。”ちょっと、待って。その言葉の定義を確認しよう。”
ファシリテイターが何度も介入してくれたおかげで軌道修正できました。
これは日本人間でも起きます。日本人間の場合、”まあ、いいか”や”なんとなく、
そういうことだろう”で過ごしてしまう人が多いのですが、それを放置しておくと、
いざ実行段階になって”え、そうだったの!?”ということになりがちです。
議論が微妙にかみ合っていない場合に「定義を確認する」。
これはファシリテイターの仕事です。
上司・部下や年齢差があるメンバーで議論すると、”パワー・ディスタンス”
により、上にモノを言えないとか、”シニオリティ・ディスタンス”
(T社のN会長の言葉を引用)、
年齢が上の人に遠慮してモノを言わない、といった現象が起きがちです。
そうなると、会議が会議ではなくなります。
個々人が会議の場では気兼ねなく発言するようにするのが一番ですが、こうした
“ディスタンス”を発見したときに、発言を誘導したり、補足しながらその
“ディスタンスを埋める”。これもファシリテイターの仕事です。
発言回数が多い人を制御し、少ない人に敢えてマイクを向ける。意見を
言いたそうな気配を察知してこちらから指名する。
これもファシリテイターの仕事です。
違和感あり、発言したい・・・議論に参加している人の顔や気配を見ていると
わかるものです。誰かが発言しているときに、ファシリテイターは発言者の
顔だけでなく、聞いている人達の顔を見て、すかさず発言したそうな人に
つなぎます。(聞いている人が息を吸い込んだり、表情が一瞬止まったりしたら、
それは発言したいと思っているサインです。)
参加者間の質疑応答に介入するのもファシリテイターの仕事です。質問そのものが
整理されておらず、回答者が答えに窮することがあります。こうした場合に質問を
シンプルに整理して、問い直す。これもファシリテイターの仕事です。
このような仕事をするためのファシリテイターの基本スキル。
それが「Wrap up & GO」です。
Wrap up、それまでの議論をとりまとめて、会議に参加しているメンバー全員に確認し、
議論を先に進める。このスキルを多用して、定義の違いによる誤解を埋めたり、
“ディスタンス”による沈黙を補足します。
その際に白板やPCを使って、とりまとめを言語化する。特に重要な意思決定の
前提の確認や、決定事項そのものの確認の場合にはこれは必須です。耳で聞いて
納得しても、文字を見たときに違和感を覚える人がいるからです。
私の多くの仕事はこのファシリテーションスキルによるものだと思います。
経営者として組織に接しているときも基本的には、議論に参加している幹部たちを
ファシリテートしながら議論を進めてきました。コンサルティングの現場では
まさにこの通り。大人数の研修で「白熱教室」的議論をするときもそうです。
このスキルを備えた人を一定数以上つくること。
これは全ての組織の人材育成担当の使命です。
一定以上のマネジャーたちにはMUST要件化すべきだと思います。
私も「柴田励司メソッド」を仕込むプログラムを開発しようかと思っています。
おまけー1:会議室の中で発言したい人の気配がわかります。
呼気の変化が決め手です。
“***さん、どうぞ”
“ん? なんでもありません。”
無意味、かつ不用意に鼻から息を吸うのは止めて欲しいので、この手のことが
繰り返された場合には、”***さんは息をしないように”と言います。
(この手の人は鼻毛が長いことが多い。)
おまけー2:最近、妙にインドネシアづいています。昨日のとある相談事が
インドネシア関連。とある会議もインドネシア。月曜の研修を手伝ってもらうのも
インドネシアの若者。スーパーのレジで会うのもインドネシア人。
うーむ。これは近所のインドネシア料理店に行かねば。