Vol.324 組織の"のびしろ"を決めるのはトップの行動

「明確さを追求する一方で曖昧さも許容する。」トップに必要な要件です。

かつて、キャドセンターという会社の社長に就任した際に
「明快、さわやか、説明可能」をポリシーとして掲げました。
こんな当たり前のことをわざわざ発表したのには理由があります。

当時の私のミッションは2カ月先が見えない中での経営再建。
経営再建は一部の幹部の力だけではどうにもなりません。
これは会社の大小関係ありません。全員参加が大原則です。

その際、総論としての合意はあっても、
社内にリーダーシップに対する疑義がちょっとでもあると、
進むものも進みにくくなります。だからこそ「透明性:Transparency」が
最低条件になります。

そこで、「明快、さわやか、説明可能」としたわけです。

私自身のスケジュールも完全公開。その内容も社内メールで全員に報告。
社長室も文字通りガラス張りにしました。

一方で、なんでもかんでも、「明快」にしようとすると立ち行かなくなります。
とりわけ、社長の視界の「明快さ」レベルを全社員に要求するとあちらこちらで
無理が出ます。

社長は立場上、誰よりも情報が集まり、視界が広いはずなので、
全員に同じレベルを要求すること自体、期待し過ぎだと思った方がよいのです。

もちろん明快さを追求することは止めません。
が、追求し過ぎない。この見極めが大事です。
あるところまできたら曖昧さを容認する。このバランス感があってこそ
組織に”のびしろ”が生まれます。

社員の「提案」に完全なものはありません。特定の人間やチームが誠実かつ真剣に考えて
まとめた提案であっても、完全なものにはなりません。だからこそ、経験豊富でかつ立場上、
視界が広い経営陣がその提案を吟味し、最終的にGoやNo Goの判断を下すわけです。

この過程でつじつまが合わないことが発覚することも多々あります。その際にどのような
反応するか。ここにかかってきます。

変に取り繕ったり、ごまかそうとした場合には遠慮なく「明快さ」を追及しましょう。
しかし、そうでない場合(こっちの方が多いと思いますが)には、つじつまが合わないことに
気づいた相手の誠実さを信じて、敢えて追及しない。ボケるくらいでもいいかもしれません。
それが、担当者の自律的な解決力とそのためのエネルギーを育みます。

そういう態度をとること自体、躊躇されるかもしれません。
はたから見て「明快さを欠く」態度と見られるのが怖いので、
つい徹底的に追及してしまいがちです。

しかし、人事権をもった人間が、いかなるときにも追及の手を緩めない
という態度を続けていると、その追及から逃れようとして、
下からは”安全パイ”の提案しか出てこなくなります。

その状態が続くと、ゲームに参加することすら消極的になります。
そうなると、組織の”のびしろ”は完全になくなります。

「社長も完璧ではない。」これは組織に安心感を醸成します。

加えて、社長がポジティブに話すかネガティブに話すか、
これも組織の”のびしろ”に影響を与えます。

社内で売上が伸び悩んでいるときに、「・・・できないと、大変なことになる」、と言うか
「・・・できたら、こんないいことがある!」と言うか。

共に、売上を上げるために組織を奮起させるための発言には変わりませんが、
組織の受け取り方がだいぶ違ってきます。前者は失敗しないように動こうとなります。
後者は成功しようと動くことになります。
組織の”のびしろ”可能性という点からすると。当然後者です。

ヒトは感情に支配される生き物です。社長だって同じです。が、その影響が大きいので
「社長」という役割を演ずる、そういう姿勢が必要でしょうね。演技であれば、
この難しいバランス感だってとれないことはありません。(どこかに冷静な自分がいますから)

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おまけー1:「オレたちひょうきん族」のDVDを購入。”しっとるけ”は26年経ってもおもしろい。
ギャグのパターンはいつも同じ。牛乳のCMづくりで、何度も何度も飲まされて、
最後に「もちましぇーん」。他のケースでもいつも同じ。それでも可笑しい。

ドリフも寅さんも同じ。全て笑う内容が予想でき、その通りに笑う。その中にちょっとだけ
「期待を裏切る:ビックリすること」もある。予定調和も悪くないかも。

おまけー2:就活で欠かせないのが、今や「自己分析セミナー」である、と聞きました。
しかし、その手法はちょっと間違えると「霊感商法」そのもの。
22歳くらいで「自己分析」してもなーというのが僕の本音です。

ちなみに、中学時代に「自己分析による適職診断」なるものを受けたところ、
最適な職種は”きこり”でした。

おまけー3:その「自己分析セミナー」がついに大学生協主催で
やるまでになっているそうですが、講師がすごい。
先週まで”消しゴム売ってた親父”が講師だったりするそうです。

さすがに「あの・・・、先週まで消しゴム売ってま」と聞いた瞬間に
「それは世を忍ぶ仮の姿だ。」と言われたそうです。うむむ・・・。

 

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