Vol.720「75歳まで働くために。」(メールマガジン「人事の目」より) 

75歳まで働ける社会にしよう!という声が出ていますね。私はこれに賛成です。
公的年金の財源問題、人口減問題からの要請もあるでしょう。私の一番の理由は
違います。元気な60代がたくさんいるということ。この人たちが充実した毎日を
送れるようになった方がいいと思うからです。これが一番の賛成理由です。

まだまだ企業の多くが65歳定年に向けて体制を整えているのが現状です。
それからすると一気に75歳というのは暴論のように聞こえますが、違います。
これは75歳まで働ける社会づくりであって、定年を75歳にせよ、という話ではありません。

社会づくりと言っても、この主体者は企業や行政ではありません。一人ひとりの国民が
主体者です。60代になっても、70代になっても、年齢に関係なく一定以上のパフォーマンスを
上げられるスキルと精神力、体力を維持できればいいのです。そうすれば年齢関係なくやる
こと、やれることはたくさんあります。国民一人一人がそうなるための支援をする社会を
つくろうという提案であれば大賛成です。

数年前にとある実験的な試みをお引き受けしました。大企業で“窓際”になった50代後半の
方々を数週間お預かりして“鍛え直す”というものです。正直大変でした。このときに
痛感したのが、大企業には“人をダメにする”仕組みがあるということです。

大企業になればなるほど、仕組みが整ってきます。そうするとその仕組みの上に乗っかって
いれば仕事ができます。人もたくさんいますので、自分がやらなくても誰かがやってくれます。
となると、自分のパフォーマンスを維持向上させようとする動機づけが働きにくいのです。

優秀と言われるヒトであれば、自らを律して、能力開発に励んでいますが、大半の人は
そうではありません。仕組みの上に乗っかって30年。その会社の限定的な仕事しかできない
ヒトになってしまうのです。

さらに、大企業で昔ながらの管理職をやっていると、「部長」や「課長」しかできなく
なりがちです。自分で手を動かさなくても下の人たちがやってくれるために、“お代官”的
存在に慣れ親しんでいる人が多くなります。お代官とは“上げてきなさい。決裁してあげる
から”という管理職のこと。自ら手を動かし、資料をつくり、意見をまとめ、という
主体的な行動をしないヒトです。最初のうちは下を育てるためという大義名分があります。
知らないうちに自分がやるよりも下がやった方が早いし間違いがないので、自分では
やらないとなり、その後、“できない”になっているのが実態だと思います。

しかし、大企業を大企業として維持させているのがこの仕組みの優越さなので、
ここを完全否定するものではありません。また管理職が自ら動き過ぎるは問題なので、
下の人たちがいろいろなことにチャレンジできる環境づくりをしていることは
良いことだと思います。

要は個々人が自分のパフォーマンスを上げる力と向き合う機会を作ればいいと思うのです。

そのために必要なのが「ポータブルスキル」と「心の持ちよう」のチェックです。
ポータブルスキルとはどこの会社、何の仕事をしようと必要なスキルのことです。
人を介して伝わる情報を正しく理解し、関係者の感情に配慮しながら動けるか、
わかりやすいメモをかけるか、自分の考えをわかりやすくプレゼンできる(話せる)か。
これだけでいいと思います。「心のもちよう」についても、謙虚さと向上心のチェックで
いいと思います。

このチェックをする機会を45歳から54歳までの10年間で雇用保険加入者全員に対して
義務づけするのはどうでしょう。60代、70代でも活躍できるベースをこの55歳を迎える前に
やっておくのです。該当年齢になると、招集通知が届き、2泊3日の合宿に参加することが
求められます。参加者はいろいろな人がいます。そこで自分のポータブルスキルと
心のもちようと向き合うことになります。この運営財源は雇用保険とする。どうですかね。
(この企画が実現するならプロデュースします。)

おまけー1:田坂広志さんの「なぜ、優秀な人ほど成長が止まるのか」― 何歳からでも
人生を拓く7つの技法(ダイヤモンド社)ドキリとする若者が多くいるはず。おススメです。
https://www.diamond.co.jp/book/9784478106853.html

おまけー2:TikTok、見るのはおもしろいですね。(自分ではやらんなー)

おまけー3:UMA情報が好きです。こればかりは56歳になってもかわらない。
セブンイレブンにはおじさんが買うのが躊躇される魅力的なUMA本がよく並んでいます。

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