Vol.727「採用の谷」(メールマガジン「人事の目」より) 

「採用の谷」。いま大企業の多くが抱えている問題です。

90年代の採用の手控えにより、40代の絶対数が不足しています。
社員の年齢別分布グラフを見ると、まさに「谷」。“陥没世代”と称している企業もあります。

年功的な昇格昇進運用が弱まったとはいえ、やはり40代というと課長、部長を担う世代です。
この世代の全体数が減ると、従来の基準では登用していなかった人がラインマネジメントの
任に就くことになりかねません。そもそも力量不足というケースもあるでしょうし、
若手を抜擢したが経験不足、ということもあるでしょう。

どんな組織でも牽引しているのは一部の優秀人材です。健全な野心をもち、成長意欲があり、
自らを高めていこうという意思がある人です。俗にいう2:8:2の原則の最初の「2」の
人たちです。しかし、日常的なオペレーションは「6」と下の「2」の人たちが担っています。
ボリュームゾーンはここです。

役員層が日常的に接しているのは最初の「2」の人たちが多いでしょう。そこの風景と、
「6」と下の「2」の風景は違います。この人たちをマネジメントしている層が弱くなると、
組織の足元が揺らぎます。

いろいろな施策を展開するが組織が思うように動かない・・・。これだけではありません。
労務問題、不正、品質問題などが起こる可能性があります。事業を停滞させるだけでなく、
会社の評判を落とすことにもなりかねません。

ちょっと前までは「残業時間の多さ」が組織的な問題を推し量る指標となりました。
最近はこれが見えにくくなりました。「働き方改革」という名の下の残業規制の影響です。
長時間労働の原因とその構造を明らかにせずに時間規制だけしますと、本質的な問題が
地下に潜ります。見た目の残業時間が減ったことで安心してはいけません。ある日、大きな
問題が勃発するかもしれません。ラインマネジメントの底上げは大組織であればあるほど、
重要な課題です。

この底上げのために、最も有効でない施策があります。「管理職研修という名のお勉強」
です。力不足の管理職に“リーダーとは?”みたいな講義をしても実質的な効果はありません。
“人のマネジメントのために”という講義も同様です。

力量不足の管理職は「仕事に忙殺」されています。メンバーのケアや育成支援どころか、
多くの仕事を抱えて身動きがとれなくなっているケースがほとんどです。こういう人に
“こうした方がいい。こうすべきだ。”と講釈しても、却ってその人が苦しくなるだけです。
(あるいは時間の無駄です。)

この人自身の仕事の生産性を高めること。これが喫緊の課題です。メンバーのマネジメントや
リーダーとして云々はその後です。

「わかりやすいメール、メモが書けるようになる」
「わかりやすく簡潔に話せるようになる」
「会議を効率よく進行できるようになる」
「PCによる作業スピードが速くなる」
「相手の意図を汲むことができるようになる」

この5つのスキルを鍛えること。これに尽きます。個人としての作業、処理スペックを
高めることで時間的な余裕が生まれ、それが精神的な余裕となり、メンバーのケア、
マネジメントに時間を割くことができるようになります。底上げのための施策はこれです。
(リーダー論はその後です。)

おまけ:これらのスキルはポータブルスキルの一部です。

社団法人PHAZEの奨励生6名が3か月にわたるポータブルスキルのトレーニングの仕上げとして挑んだ
「KAMBEE(官兵衛)」のダイジェスト映像ができました。ぜひ、ご覧ください。(5分くらいです。)

http://phaze.jp/news_20181215/

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