サンノゼ(San Jose)に来ています。コスタリカではありません。アメリカ西海岸、
サンフランシスコの隣のサンノゼです。目的は、シリコンバレー周辺の企業の人事に
まつわる最新動向のヒアリング。この手のことはネットや書籍からも学べますが、
当事者から直接話を聞くのが一番です。現地に行かずに情報取集すると理解が偏ります。
なんでもそうですが、自分発検索には限界があります。自分の興味のアンテナが
立っているものしか見えません。だから、現地の人から話を聞かせていただくのです。
GAFAが優秀なエンジニアの獲得のために報酬相場を引き上げています。このため、
シリコンバレーの最新テクノロジー関連のエンジニアの給与が高騰しているとのこと。
その影響で物価、特に賃料が急上昇してしまい、10万ドルの年収でもまともな家に
住めないという状況になっているようです。
さらに報酬相場の変動が激しいために、On demandベースで報酬の見直しをしている
とのこと。報酬改訂は年1回なんていう運用に縛られていると人財獲得競争に
勝てないそうです。
一方で現金報酬以外の要素には今まで以上にスポットライトが当たっています。
例えば、勤務時間帯や勤務地を選択できること、ワークプレイスのデザイン、機能性、
無料の食事、更には犬を連れてこれること等。更には、その会社のビジョンや
リーダーシップのあり方、組織風土が働く場所の選択の際に重要視されているそうです。
応募者はこの手の情報をネットから得れます。“glassdoor”というサイト(2018年5月に
リクルートが買収)では、企業の口コミ情報を見ることができます。日本にも似たような
ものがありますが、レビュー数が圧倒的に多くリアルです。
歴史的にアメリカの人事制度は「差別との戦い」です。それは今でも変わりません。
採用、評価にあたり、人種、出身、性別等による差別が反映されないように属人的要素を
排除する強制力が底辺にあります。日本では当たり前の「履歴書」ですが、
カリフォルニア州ではそこに書く内容を応募者に求めることはできません。前職の給与を
聞くのも法律違反です。これは女性の賃金差別の解消が目的で、転職時に前職の給与水準を
引きずらないようにするためだそうです。
こうした背景や新卒一括採用が中心の日本との違いから、“アメリカと日本は違う”と
片付けがちですが、これからの10年を考えるとそうも言ってられないだろうな、と思います。
まず、日本では「人財の量」が減ります。需要と供給のバランスから、優れた人財の
取り合いになることは目に見えています。これまでのように「うちの会社はこうだから」
と押し付けていたら採用できません。応募者の意思や状況に応じた柔軟な対応が求められる
ようになるのは明らかです。必要に応じて、賃金相場の情報も今よりも充実するでしょう。
新卒一括採用の仕組みが大幅に変わらないとしても、在学中のインターン活動を通じた
“なし崩し”採用はすでに始まっています。この動きも加速するでしょう。
何よりも、働き手の意識、特に若い世代の意識が昭和世代と違います。“著名な会社に入って、
出世して高い報酬をもらう”よりも、自分自身が楽しいか、世の中のためになっているか、
を重視するようになってきています。これは日米変わりません。幼少時からの経済環境が
ほぼ同じで、ネットを通じて同じような情報に触れてきているので当然の結果と思いますが。
「体験価値」があるのなら、お金を払ってでもその仕事をしたいという若者も出てきています。
Vol.752「お金を払って仕事をする価値観」
「人財」はどの会社においても最も重要な資産です。今後10年を見据えて、自社の人事ポリシー、
制度をどうすべきか。役員合宿のアジェンダにしてみませんか。(スケジュールが合えば、
私がファシリテーターで参加しますよ。)
おまけー1:サンノゼ到着時のことです。中国人3名が先に降ろされ検疫、他の全員が機内で待機に。
およそ40分で解放されましたが、もし、その中国人の中に「陽性」の方がいたら、
ダイヤモンドプリンセス号状態でした。
おまけー2:サンノゼのジャパンタウンの某寿司店でのこと。入店して日本人客が一人もいない
ことに気づき、“TV番組で成敗される寿司屋みたい”と話していたところ、
握り寿司にごはんが出る展開に。
おまけー3:部屋の電話の「Concierge」を押しても、「Service Express」を押しても
出てくる人が同じ。ルームサービスを運んできた人も同じ?
一流チェーンのホテルも人財が足りないらしい。
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